[最終更新日:2022年5月27日]
2013年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。世界中から日本の食材や調味料に注目が集まっています。その中でも「味噌」への関心が高いのです。そこで今回は、味噌を深く知るプロフェッショナル「みそソムリエ」を紹介します。
日本の料理に欠かせない味噌
味噌とは、大豆や米、麦に塩と麹を加え発酵させて作る発酵食品。日本人はもちろん、訪日して味噌味が好きになった人にとっても味噌は外せない調味料です。日本での味噌の起源は奈良時代(710〜794年)。実は約2500年前には味噌の原型が造られていた形跡があるのですが文献に登場するのは奈良時代です。歴史ある日本伝統の味といえます。
味噌汁はほぼ毎日食べるソウルフードです。味噌は各家庭に必ず置いてあります。その中でも料理好きな人、味噌が好きな人は大手味噌メーカーの商品より自分の好みの味噌を選びたいと思っています。でも、味噌にはたくさんの種類があり、その全てを知る人は少ないのです。また、自分で味噌を造りたい人もいます。そこで、味噌に詳しい「みそソムリエ」にアドバイスしてもらった方が理想的な味噌味に出会えるのです。
「みそソムリエ」を知っていますか?
日本には様々な民間資格があります。本来は別の場面で使われる単語「ソムリエ」「マイスター」「マエストロ」「コーディネーター」「アドバイザー」と、食材や工芸製品を組み合わせた造語の肩書きです。資格取得するためには、経験年数が必要なことや講習を受けて、受験後に合格することが必須条件なのです。この資格は民間会社や業界団体が運営しており、国家資格ではありません。しかし、資格取得者は称号とともにユーザーからの信頼を得ることができるのです。
「みそソムリエ」とは「味噌」を深く愛し、理解と知識を深め、国内外に味噌文化を広める伝道者です。また味噌造りや味噌を使った料理を後世に伝えていく伝承者でもあります。
「みそソムリエ」は「みそソムリエ認定協会」の資格講座、認定試験を受けて、認定された者のみに与えられる公式名称です。
ここでは味噌の専門家「みそソムリエ」の1人を紹介します。彼は民間資格を単なる肩書きだけではなく実際に毎日の仕事に役立てて情報を発信しています。彼の勤める東京・下町の味噌屋に行ってみましょう。彼は日本語のみで味噌に関するコミュニケーション能力を発揮しています。
みそソムリエ・夏川雄介さんと「郡司味噌漬物店」
東京の台東区鳥越一丁目は東京大空襲で焼けなかった地域。今でも戦前からの長屋が残る昔ながらの職人の町です。その下町の商店街・おかず横丁にある「郡司味噌漬物店」は1957年創業。家族経営の味噌屋で、夏川雄介さんは営業部部長をつとめています。23歳でこの店で働き始めて、今年で15年。お店だけでなく百貨店にイベント出店した際にもお客さんに味噌の魅力を伝えています。
「創業者の会長は終戦後に捕虜として4年間のシベリア抑留経験があります。飢えと寒さ、強制労働の日々の中、戦友達との話題は食べ物の話ばかりで『母親が作った味噌汁が食べたい』と話していたそうです。そういう味噌に対する熱い想いに感銘を受けました。僕もその火を消したくないと思っています」(夏川さん)
今も健在でみんなに「お父さん」と慕われる郡司春雄さんは現在98歳です。当時、戦友達の想いを聞き「生きて帰ることができたなら味噌屋になろう。戦友達の命を支えたお袋の作る味噌を商おう」と決心。夏川さんはその想いを受け継いでいます。
味噌へのこだわり
「みそソムリエ」は味噌の知識に深さと幅があります。郡司味噌漬物店の「みそソムリエ」は現在3人(夏川さん、社長の郡司武司さん、営業部主任の池本康博さん)。
「元々、味噌のことは知識はありましたが、みそソムリエになってからは味噌の説明にも説得力が出るみたい(笑)です。百貨店イベントに出店してる際にも役に立ってますね」(夏川さん)
お店に来てくれるお客さんにも料理や季節、食材に応じた味噌の相談に応じてくれます。
郡司味噌漬物店の味噌は全て天然醸造です。大寒(寒さが最も厳しくなる季節。毎年1月20日~2月3日頃)に仕込み、その夏を越え、次の夏に完成します。「時間はかかりますが、バツグンの味です」と夏川さんは胸を張ります。
「料理の隠し味としても味噌を使ってみてください。カレーやシチューに味噌をほんのちょっと入れるとコクが出ます。またチーズにちょっと味噌を付けて食べてみて。発酵食品どうしなのですごく相性がいいんですよ」(夏川さん)
味噌は食べるだけでなく調味料としてもいろいろな使い方ができるのです。健康に良く、癒し効果もあります。
味噌の魅力を発信する、みそソムリエ・夏川さん。彼の笑顔に会いに東京・下町の商店街に行ってみてください。
郡司味噌漬物店
住所:東京都台東区鳥越1-14-2
営業時間:月〜金 9:00〜19:00
定休日:日・祝・第2・第4月曜日
mail:info@gunjimiso.com
URL:http://www.gunjimiso.com/
Facebookページ:https://www.facebook.com/gunjimiso/
※この記事は、2015年8月10日に「アークのブログ」にて公開されました。