日本のマンホール蓋の芸術性とそのムーブメントを知る!

[最終更新日:2022年7月18日]
日本独特の伝統や文化の中でも個性的なコンテンツの一つがマンホール蓋です。そんなマンホール蓋に魅力を感じるマニアがいます。最近ではマンホール蓋に関するイベントもあり、人気も上昇しています。そもそもマンホール蓋を楽しむ日本のムーブメントはいつ頃から始まっているのでしょうか。今回はネット時代におけるマンホール蓋マニアである森本庄治さんにお話を聞きました。

森本 庄治(もりもと しょうじ)
マンホール蓋愛好者。イベント「マンホールナイト」メンバー。ソーシャルソフトサービス「マンホールマップ」も実施中。
Twitter: @morimo_t

マンホール蓋観察文化は1984年から始まった

マンホール蓋は日本人にとっては何気ない日常風景です。でも、その芸術性の高さとバリエーションの豊富さは世界一といえます。
「最近、世界中から日本のマンホールが注目されるようになったのはオーストラリア人の写真家レモ・カメロタの写真集がきっかけかもしれません。この写真集はNew York Book Festival 2010でベスト・フォトグラフィー・アートブック賞を受賞して話題になったようです」(森本さん)


▲『Drainspotting: Japanese Manhole Covers』(Remo Camerota)

日本国内でもマンホール蓋を探し歩き、撮影や拓本をとる人が多く存在します。ここ数年、マニアが増えて、イベントでも交流を図っています。テレビやネット上で紹介される機会も増えました。では、そもそも日本でマンホール蓋を愛でる文化はいつ頃から始まったのでしょうか。
「デザイナーで路上観察学会員の林丈二さんが1984年に『マンホールのふた 日本篇』という本を出版されたんです。マンホール蓋を観察する文化はそれから始まったといえます」(森本さん)
2005年に刊行され絶版となっていた『路上の芸術』(垣下嘉徳)も2015年2月に「復刻版」が再刊されてました。ともに路上観察趣味者にはバイブルであり基礎テキストになっています。


マンホールのふた 日本篇』(サイエンティスト社)
路上の芸術【復刻版】』(ホビージャパン)

インターネットSNSで魅力を広める

それまでマンホール蓋観察者は旅行先や出張先で見つけたご当地マンホール蓋を撮影するだけという人がほとんどだったようです。
「僕が初めてマンホール蓋の写真をとある写真共有サービスに公開したのが2007年でした。反響が大きかったので、皆マンホール蓋に興味あると気づいたんです。僕はそこから始めたのでまだまだ新参者なんです(笑)」(森本さん)
彼のすごいところはそこからの展開でした。

「始めた当初、一番困ったのはネット上でマンホール蓋の写真があっても位置の詳細が分からなかったことです。町名までしか出ていなかった。行ってみて探してもなかなか目当ての蓋が見つからなかったんです。今はもう経験値が上がったので地図見たらだいたいどこにあるか分かるんですけど(笑)」(森本さん)
そこで彼は友人のSEに「位置情報が分かるマップ作って」と頼んで、サイト「マンホールマップ」が完成したのです。
「自分の個人的欲望から作ってもらいました(笑)。それにツイッターで#manhotalkというハッシュタグも作りました。「マンホール」で検索して、いろんな人と交流もしました。ソーシャルでマンホール蓋の魅力を広めていったんです。するとツイッター上でマンホール好きのコミュニティが形成され始めたんですね」(森本さん)

みちくさ学会」という路上観察趣味ページがあり、彼はその中の「マンホール蓋」講師も務めています。ここにはマンホール蓋の写真と基礎知識や歴史、撮影ノウハウも詳しく書かれています。
「『みちくさ学会』から声がかかるのと並行してツイッター上でコミュニティが形成されつつありました。そして、『マンホールナイト』というイベント・チームが生まれたんです。サイト『マンホールマップ』からはツイッターで知り合った人がボランティアで連携するiPhoneアプリ『マンホールMAP』やマンホールのつぶやきを自動収集してくれるボットを制作してくれたり。ソーシャルなチカラはすごいなと思いましたね」(森本さん)
まさに彼はネットの普及とともに趣味の世界を展開してきた「インターネット時代でのマンホール蓋愛好家」といえます。

マンホール蓋愛好イベント

イベント「マンホールナイト」が始まったのが2011年11月2日でした。
「元々はマンホール好きの学会的なイベントとして始まりました。本格的な調査や研究しているんですよ。毎年11月開催予定なので興味ある方は募集サイトをチェックしてくださいね」(森本さん)

また毎年開催されるイベント「マンホールサミット」(主催:下水道広報プラットホーム(GKP))にも「マンホールナイト」のメンバーは関わっています。
「『マンホールサミット』は大盛況で毎年300人以上が集まります。僕らは協力で参加しています。マンホール蓋愛好のムーブメントは年々盛り上がっています。マンホール蓋グッズや本もたくさんあるんですよ」(森本さん)


森本さんが気に入っているマンホール蓋を紹介

今回は、森本さんご自身が気に入っているマンホール蓋をいくつか選んでいただきました。森本さんの解説コメントと合わせてご覧ください。


①釜石市の蓋:釜石・大槌地域に伝承されている虎舞をモチーフにした蓋。ダイナミックにデザインされた虎が素晴らしい 

②小平市の蓋:日本中に多数ある富士が描かれている蓋の中でも、緩い雰囲気のデザインが魅力

③福井市の蓋:空襲、大震災と2回の大被害から力づよく復活した福井市を、2羽のフェニックスで表現

④広島市の蓋:平和の祈りと、治水への誓いを6本の千羽鶴の束で表現

⑤釧路市の蓋:夕焼けの中、親子の丹頂鶴が飛翔している姿を描いた蓋

⑥松茂町の蓋:市の花 松葉菊の中心にまっぴー。ゆるキャラ蓋には珍しい控えめな感じ。和みます

⑦大船渡市の蓋:東日本大震災被災地のマンホール蓋。よく生き残ったと思います

マンホールマップhttp://manholemap.juge.me/
マンホールナイトhttp://manholenight.info/
マンホールカードhttp://www.gk-p.jp/mhcard.html

※「マンホールサミット」についてはこちらの記事もご覧ください
http://www.ark-gr.co.jp/blog/manhole-summit2016/
※「マンホールカード」についてはこちらの記事もご覧ください
http://www.ark-gr.co.jp/blog/manhole-card_2017/

※この記事は、2015年10月9日に「アークのブログ」にて公開されました。