「マリオ&ルイージ図屏風」の木版画を制作した[芸艸堂]

[最終更新日:2022年7月21日]
日本画の歴史ある流派の一つ「琳派」四百年と任天堂「スーパーマリオブラザーズ」30周年を記念し、国宝「風神雷神図」をモチーフにした「マリオ&ルイージ図屏風」が制作されました。また、その木版画も制作され、90部が限定販売されています。木版画を制作・発売したのは120年以上の歴史をもつ日本唯一の手摺木版本の出版社である芸艸堂(うんそうどう)。今回は芸艸堂の仕事と「マリオ&ルイージ図屏風」の情報をお届けします。


「マリオ&ルイ―ジ図屏風」©Nintendo 作 山本太郎 2015年

[芸艸堂]は本来の意味で、日本唯一の「板元」

出版業界では出版社を版元(はんもと)と呼ぶことが多いのです。江戸時代は機械印刷がないので木版画が主流でした。版木の製作から印刷・販売まで一貫して行う書物問屋が版木を所有していたことから板元(はんもと)と呼ばれていたのです。時代が移り、板が使われることが減って、「板」は「版」に転じました。現在、手摺りの木版本刊行や手摺り技術を活用した美術書の制作をする板元は日本で[芸艸堂]だけなのです。


創業1891年と、120年以上の歴史を持つ[芸艸堂]四代目の山田博隆さんにお話を聞きました。
「昔から京都の地場産業は着物の染織などが主だったところでした。そういった着物の図案家(デザイナー)や工芸作家たちが参考にする図案本(集)を私どもは出版してきたんです。昔はカラー印刷といえば木版摺でした。1枚の絵や図案をつくるのに色を重ねていくので版木はたくさん必要なんです」(芸艸堂・山田さん)
明治・大正・昭和初期に活躍した神坂雪佳(かみさかせっか)は京都でも有名な画家・図案家。琳派の柄を使い、新しいデザインを提案して京都の工芸界を活性化させました。その神坂雪佳の図案本を出版していたのが芸艸堂です。


※琳派模様(りんぱもよう)/百々世草(ももよぐさ

「当時、雪佳さんの本を出すと他の出版社は別のデザイナー(図案家)を見つけてきて新しいデザインを提案した本を出すわけです。お互い競い合っていましたね。現代のファッション誌のようなものをイメージしたら分かりやすいかもしれません。『次はこういう柄が流行りそうですよ』と新しいデザインを出し合って、京都の図案家や工芸作家に販売していた。競争があるから次から次に新しいものが増える。すると必然的に摺るための版木も増えていったというわけですね。所蔵している版木は数えたことはありませんが、推定で10万枚以上ですね」(芸艸堂・山田さん)




芸艸堂の経験ある彫師、摺師といった職人さん達の手間と労力によって、現代にも継承される美しい木版画。その技術は浮世絵や鑑賞作品、美術本以外にも活かされています。扇子、手ぬぐい、絵はがき、便箋・封筒、折り紙、ファイル、和雑貨。木版和綴じノートや和の手控え帖、豆本も世代を超えて人気があります。一筆箋は縦書きに不慣れな外国人からの要望で横書きバージョンも販売。販売サイトもチェックしてみてください。

芸艸堂
[URL]→ http://www.hanga.co.jp/

京都本店》 9:00~17:30(店休:土日祝)
京都府京都市中京区寺町二条南入妙満寺前町459番地

東京店》 9:00~17:30(店休:土日祝)
東京都文京区湯島1-3-6

琳派400年×スーパーマリオ30周年記念「マリオ&ルイージ図屏風」

「マリオ&ルイージ図屏風」を制作した経緯をイムラアートギャラリー(展覧会の企画・制作)の担当者の方にうかがいました。

「現代の琳派継承者の一人、画家の山本太郎(イムラアートギャラリー所属)が琳派四百年という機会に『何か特別なことができないか』と考えておりました。そんな折に任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』が30周年を迎えられると知り、お互いを祝うような絵を描かせていただけないかとオファーをしたのがはじまりです」(イムラアートギャラリー・担当者)

山本太郎さんは、古典絵画の中に現代の風俗を紛れ込ませたユーモラスな作風で、ニッポン画家とも現代の琳派とも称されています。
今回の「マリオ&ルイージ図屏風」のモチーフになったのは俵屋宗達による「風神雷神図」。
「琳派の祖といわれている俵屋宗達の『風神雷神図』は400年もの間、継承されてきた琳派の大切なモチーフ。山本太郎も敬愛の念を強く持っています。そして、任天堂も『スーパーマリオブラザーズ』というキャラクターを企業の宝として守っていますよね。もし描かせていただくのであればこういう構図がいいのではないかと提案させていただきました。とは言っても実は、山本太郎も私どもみんな『スーパーマリオ』世代なんです(笑)」(イムラアートギャラリー・担当者)


“MARIO and LUIGI Rimpa Screen” ©Nintendo, Taro YAMAMOTO, 2015

「マリオ&ルイージ図」は屏風だけでなく、木版画として芸艸堂が制作しました。
「屏風だけだと一般の皆様の手元には届きませんよね。こういう良い機会にせっかくですから木版画を作って、琳派のファンにも任天堂ファンにもお届けできないかと任天堂と芸艸堂に相談させていただいたんです」(イムラアートギャラリー・担当者)
「任天堂もイムラアートギャラリーも芸艸堂も、同じ京都の企業です。これに参加して同じ作品が作れるのは光栄ですし、楽しいですね」(芸艸堂・山田さん)
これは、日本の美術史にもゲーム史にも残る、ある意味「国宝級」の作品です。これをその目に焼き付け、複製を手元に置くというのは現代人として極上の幸せだと思います。

「マリオ&ルイージ図」木版画
版画面上に「山本太郎」サイン・落款・限定番号(90部限定)入り
価格 : 194,400円 (税抜18万円)
[芸艸堂]公式サイト→ http://www.unsodo.net/

この記事は、2015年10月22日に「アークのブログ」にて公開されました。